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オフィスワーカーの方は、長時間の座位姿勢でモニターを絶えず注視しており、キーボードをたたき続け、マウスを支えているため、肩こりの理由はストレスや姿勢の悪さ、眼精疲労、手や腕の筋疲労など、様々考えられます。一般的に肩こりとは、くびから肩へのツッパリ感や重だるさなどの多彩な不快感を意味し、僧帽筋の硬直が原因と考えられていますが、実際には肩こりを誘発させる部分は僧帽筋以外にもあることがしばしば見られます。
診療時に、肩や首、腕まで診察し、筋肉の伸張性や関節可動域に支障がないか、強い圧痛がないかなどを調べ、治療方法の決定に役立てます。
つらい肩こりでお悩みのオフィスワーカーは多数いらっしゃいますが、多くの方が “仕事が忙しすぎて治療に時間が割けない”とおっしゃいます。肩こりは必ずしも治療に時間を要するものではありません。当院では皆様のスケジュールに支障を来さないよう、少ない来院回数でも高い効果が期待できる様々な治療法を提案します。
例えば、物理療法で使用する低周波治療器は、筋硬直の緩和や筋活性化に有用です。使用方法に慣れれば、ご自身でも小型の治療器を用いて自宅で治療することが可能です。
また、当院の理学療法士が担当する運動療法では、立ち姿や歩容のバランスチェック、歩行時の手の振り方や歩き方などを細かく指導します。また、座位姿勢での関節の微妙なズレの矯正、内臓の位置修正などの徒手療法は、単なるストレッチや筋トレ指導と異なり、即時的な効果が期待できます。
医師による治療は、原疾患の検索、内服薬処方やブロック療法などを行います。例えば朝から発生する強い肩こりでは、高血圧や片頭痛、睡眠時無呼吸症候群などが原因の場合があります。主に筋弛緩薬や消炎鎮痛剤、漢方薬やビタミン剤、片頭痛薬やシップなどを処方します。
ブロック療法では、エコーを見ながら肩こりに関わる関節や筋膜、神経にダイレクトに薬剤を注入しますので、高い安全性と即効性があります。
治療後に“こうしたら肩こりが良くなった”という経験を得ることで、自ずと“こうすれば肩こりが良くなるor悪くなる”という自己分析や理解につながります。このつながりが肩こり軽減に最も大事だと考えております。肩こりでお悩みのオフィスワーカーの皆様、“どうせ治らない”とあきらめず、ぜひご受診いただきたいと願っております。
肩甲挙筋は、頸椎側面から肩甲骨上内縁を結ぶ筋肉で、肩甲骨を適切な位置に安定させる作用があります。
しかし、周囲に僧帽筋や斜角筋、板状筋などの頭を支える筋肉があり、配置も似ているために、肩甲挙筋はしばしば本来の役目とは異なり、頭を支える役目に誤用されます。
その結果、肩甲骨よりも安定性が高い頸椎に肩甲挙筋が牽引されるようになるため、逆に肩甲骨が肩甲挙筋に引き上げられ、肩甲骨の筋付着部に痛みを発し始めるようになります。特に、猫背で頭部が前に突き出ていたり、重い荷物を持ったりして左右の肩のバランスが乱れていると、肩甲骨は肩甲挙筋によって首に引っ張り上げられて、肩こりを発することになります。
小胸筋は、肩甲骨前方から肋骨の間にある筋肉で、肩甲骨を前下方に引き下げる作用がありますが、過度な緊張状態では、肩甲骨を内旋位で動かなくするために、肩甲骨内縁が後方へ突出、その結果僧帽筋が牽引され、肩こりを発することになります。長時間のデスク仕事でキーボードを打ち続けることや、肘を曲げた姿勢でスマートフォンを長時間操作することにより、肘や前腕の筋肉が長時間過緊張状態のままだと、手首から前腕がカチコチになって動きにくくなり、前腕を回内(手のひらを下に向ける)しにくくなります。
すると、例えばキーボードを操作するためにはどうしても腋を開いて肘を高くすることで掌を下に向けようとするようになり、それが結果として小胸筋の過緊張を生み、ひいては肩こりを発することになります。
大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の四つから構成され、後頭部と頸の境目に位置します。頭を安定した位置に保つことと、首を回旋したり、頭を上に向けたりする作用があります。後頭下筋群が過緊張状態にあると、頭部が前方に突出し、顎を前に突き出した姿勢となるため、背中の僧帽筋が牽引されることにより、肩こりを発生します。
それ以外にも、後頭下筋群は眼球運動に伴って絶えず筋活動しており、睡眠不足や眼精疲労などの目にまつわるストレスによっても、過緊張状態となることが知られています。
前鋸筋は肩甲骨内側縁からはじまり、12本ある肋骨のうちの上側9本に繋がる筋肉です。僧帽筋下方線維と協調して肩甲骨を下方に引き下げる作用を持ちますが、どちらも肩甲骨を最も適切な位置に安定させるのにとても大事な筋肉です。
ちなみに前鋸筋が弱いために背中側に肩甲骨内側が突き出た状態になることを、翼状肩甲(winging)と呼んでいます。これらの筋肉は、運動不足や加齢変化に伴う筋委縮が目立つ部分であり、対策としては筋力トレーニングや電気治療器による筋力増強が有用です。
胸鎖乳突筋は、胸骨上縁から左右のくび側面を通って側頭骨および後頭骨下縁に付着し、顔を上に向けたり、横を向いたり後ろを振り返ったりするときに作用する筋肉ですが、痙性斜頸に関連する筋肉の一つでもあります。
痙性斜頸は、肩こりを引き起こす見逃されがちな疾患の一つですが、筋硬直が原因で頸部の回旋が困難となり、横を向きにくくなるのが特徴です。本人がまっすぐ前を向いているつもりでも、頸椎X線正面像では、顔が左右どちらかに傾いており、エコー検査でも頸部周囲筋(頭板状筋や僧帽筋)が非対称性に肥大することから診断が可能です。
発症に至るメカニズムはいまだ不明ですが、日常生活や仕事で長時間にわたり、左右どちらかを向き続けていると、そちら側しか向けなくなり、斜頸が発生することが多いです。
典型的な例としては、仕事中、重いものを肩とくびで支え続けたり、横にあるモニターに長時間くびをひねって見続けたりすることで、徐々に曲がってしまうことがあります。
治療としては、物理療法、理学療法の他に、ボトックスの筋肉内注射が有効と考えられています。
当院で物理療法として活用するものに、電気治療器があります。
電気治療は体内に電気を流すことで神経に作用させ、痛みの伝達を遮断する効果があります。さらにEMS(Electrical Muscle Stimulation)を用いることで、骨格筋および運動神経に電気刺激を与え、筋収縮を発生させることも可能です。肩こりで強い硬直が認められる筋肉を効率よく収縮させ筋肉の伸張性を高めることで関節の柔軟性を向上し、くびや肩への負担を軽減させる効果もあります。
治療のために電気を体内に流す際に、皮膚表面までであれば低周波、広範囲に流すなら中周波領域と、目的に応じて出力や種類を変えて使用します。
治療の目標となる部位に電気刺激を与えて、様々な治療効果を得る。
電気治療は、必ずしもご本人が痛みを感じる部分に行うものではありません。効果的に行うには、痛い部分と、痛みを誘発している部分にも電気刺激を与える必要があります。そのため、電気治療で最も大事なことは、“どこが痛みの原因か”を推測することにあります。治療をお受けになるご本人も、“どこが最も痛む部位なのか、自分でもうまく示せない”という場合があります。そんな時こそ、何度も場所を変えて治療が可能な電気治療器が有用です。一日に何度使用しても健康に害を及ぼすことはありませんので、最も効果があるポイントを見出せるように、条件を変えて治療を継続することが大事なポイントです。
プラセンタやビタミン注射には、基礎代謝や免疫力の向上、自律神経やホルモンバランスの調整効果などがあるため、肩こり治療にとても有用です。
当院では、ラエンネックを使用しております。 ラエンネックは、1959年に稗田健太郎博士が胎盤から抽出開発し、当時の厚生省が肝硬変の治療薬として認可したものですが、肝細胞の機能回復以外にも、①成長ホルモンの分泌促進 ②神経細胞の成長因子活性化 ③活性酸素除去による老化防止効果 などがあると言われています。美白効果やしわが薄くなったなどの美容効果や健康向上効果が有名なため、現在では美容外科領域で盛んに利用されています。
ラエンネックには、血行促進、疲労回復や抗炎症作用なども認められており、整形外科領域では肩こり、腰痛、慢性疲労症候群などに用いられます。 ラエンネックは、皮下注射や筋肉注射で投与します。最初は週1回を1~2か月程度で、その後は2~4週に1度、維持療法として使用します。
(注意点:ラエンネックはヒト組織や血液を原料とした医薬品です。ラエンネックを使用した方は、献血ができなくなります。)
私たちの体に必要なビタミンやアミノ酸などの栄養成分を体内に補うことで、病気や体の不調から速やかに回復することを目的とする治療法です。静脈内に注射するため、より確実に体内に吸収されることにより、薬を経口摂取するよりも高い即効性が期待できます。
ご本人の状態に応じて最も効果的なビタミンをお勧めいたします。
例)
ビタミンB1注射(別名ニンニク注射): 筋肉に蓄積した乳酸の代謝促進で疲労回復作用
ビタミンC注射 : 老化の原因である活性酸素を無害化する作用や免疫力向上作用
当院では、理学療法士や柔道整復師などの国家資格を有するセラピストが、運動機能の改善及び疼痛緩和を目的に、運動療法を個別指導します。彼らは治療開始時に作成したリハビリテーション計画に則り、患者さん本人の自主性や積極性を促しつつ、最も効果的な運動療法を提案します。セラピストによる筋膜リリース、関節モビライゼーションなどの徒手的治療やストレッチングは肩こり治療にとても有用です。
ストレッチングは筋肉の長さを回復するものとして、リラクセーションは筋緊張を改善するものとして、運動療法の代表的な手法です。ただし、むやみに背中をストレッチやマッサージをしても十分な効果を発揮できないことがあります。
例えば肩こり改善を目的とした背中(僧帽筋)の効果的なストレッチには、肩甲骨や胸椎の可動性を高めることが大事であり、そのためにはまず、前胸部の柔軟性を回復する必要があります。
このように運動療法では、なにが肩こりの原因かを明確にし、それに対して順序だてて計画的に治療を行います。
四十肩のために肩を動かさないでいると、肩周囲の筋力や柔軟性が低下するため、腕の土台である肩甲骨を無理やり動かして、肩の動きを補うことになります。その結果、肩やくび周囲の筋肉に疲労がたまりやすく肩こりがひどくなりますが、この場合、肩こりと四十肩の治療を並行して計画的に行う必要があります。
背を丸めた姿勢では、骨盤から腕までつながる広背筋が、腕を引き下げるよう作用するため、肩の動きまで影響します。すると、四十肩の場合と同様にくびや肩の筋肉疲労を招き、肩こりを起こします。そのため、肩こりの治療においても座位姿勢を整えることがとても大事です。
体幹筋の筋力不足や下肢関節の柔軟性が低下してくると、どうしても前傾姿勢になりがちです。歩行時には、むりやり上半身を後ろに反り返ってバランスを取りますが、腕振りが体の後方に偏り、肩甲骨が頭側にずれやすくなり、背筋や肩周囲の筋疲労を招くため、肩こりの一因となります。
運動療法で最も大事なことは、患者さんと治療者との信頼関係です。少しでも多く体の悩みを伝えてもらうほど、治療者は患者さんの病状をより深く理解できるので、おのずと治療効果が上がります。よって、高い治療効果を得るために最も大事なことは、担当者が患者さんから隠し事なく何でも相談されるくらい信頼される、人格的にも優れた医療人であること、と考えております。当院スタッフは皆が医療人としての高い良識と人間性に恵まれており、受診する皆様に、時には楽しく、時には厳しく治療を行います。また、医師の定期診察では、治療内容やその効果、安全性などと同時に、担当者と患者さんとの間での信頼関係も確認しております。健康上のお悩みなら肩こりに限らず、遠慮なくご活用いただきたいと思います。
各種リハビリも効果が乏しいような頑固な痛みに対して、下記精密検査をご案内します。リハビリを継続して1か月以上経過しても症状に変化が全く見られない場合には、医師にご相談ください。
姿勢を変えて脊椎を撮影し、脊椎の配列変化と症状との関連の有無を評価します。
脊髄神経や椎間板などを描出します。ヘルニアや狭窄症、脊髄腫瘍などを調べることが可能です。(MRI撮影可能な提携医療機関をご案内いたします)
血管の走行や血流に異常がないかを血管造影にて精密検査します。 胸郭出口症候群の診断に有用です。撮影前に造影剤を血管内に注射するため,提携病院での入院が必要となる場合があります。
睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返し、その結果、日中傾眠などの様々な症状をおこす疾患をさします。一晩7時間の睡眠中、30回以上の無呼吸がある、もしくは1時間あたりに5回以上の無呼吸がある場合、SASと診断されます。
SASでは、睡眠中にたびたび呼吸が止まり、そのたびに呼吸を再開させるために脳が起きてしまい、十分な睡眠がとれず、日中の眠気、起床時の頭痛や肩こり、高血圧などを起こします。
当院では、ご自宅で可能なSASの簡単な検査を承ります。手と顔にセンサーを付けて、眠っている間の呼吸と血液中の酸素濃度の状態を検査します。多少の煩わしさはありますが、痛みを伴うものではありません。遠慮なくご相談ください。