約1cmの皮膚切開から直径約4mmの関節鏡を関節内に挿入し、
映像をモニターで見ながら手術を行います。
肩や膝と比べると、足関節は関節腔が狭く、関節鏡が
挿入しにくい部位です。
そのため、積極的に足関節鏡手術を行う施設はごく一部に
限られてきました。
近年では、より細くて精巧な関節鏡や、
特別に開発されたツールのおかげで、
従来よりもずっと簡便に施行が可能です。
“当院”では日帰り手術として行っております。
“足首をひねった”という経験は誰でも一度はある通り、
足関節捻挫は足関節のトラブルで最も多くみられます。
足関節捻挫は
という特徴があります。
多くの場合、足関節捻挫はテーピングなどの患肢固定で治癒します。
その一方で20~30%程度がCAIへ移行すると言われています。
ひとたびCAIを起こすと、関節が不安定なために
等の症状が出ることが知られています。
CAIの治療には、損傷した靭帯の修復ないしは再建が効果的です。
足関節は、脛骨遠位関節面、内踝及び外踝で構成される
関節窩に、距骨がはまり込む構造をしています。
これらの骨には、足関節の安定性に重要な役割をする
多くの靭帯が付着しています。
足関節捻挫によって、これらの靭帯が緩んでしまうと、
①②を何度となく繰り返すことが、CAI発生の原因ではないかと
考えられています。
①受傷機転の把握
“受傷時に足首をどのようにひねったか”を本人から聴取
②損傷靭帯の重症度評価
運動器エコーによる損傷靭帯の診断及び評価
③足関節の不安定性や軟骨損傷の有無を評価
X線撮影、MRIなどの画像検査による精密検査
内反捻挫は内返し強制されて発生し、
足関節外側靭帯損傷を来します。
足関節外側にある3本の靭帯をまとめて外側靭帯と
呼びます。
足の靭帯損傷の70%以上が外側靭帯損傷であり、
スポーツ外傷としても最も頻度の高いものです。
なかでも前距腓靭帯、踵腓靭帯は特に損傷を
受けやすく、CAIの原因となるために手術対象と
なることが多い部分です。
関節鏡手術が適応可能です
三角靭帯損傷
外返しを強制されて発生しますが、
三角靭帯は強靭なため、靭帯の代わりに内踝が剥離骨折することがあります。
遠位脛腓靭帯損傷(high ankle s prain)
つま先立ちの姿勢で足首を内返し
強制されて発生します。
頻度は約10%と低いこと、外踝上方に
限局した腫脹と痛みがあることが特徴
です。
足関節よりも近位(すねのあたり)で
腓骨骨折を来すこともあります。
これらの場合、骨折などの併存疾患を精査してから関節鏡手術が適応可能か判断します。
Ⅲ度損傷はCAI発生の可能性が最も高いため、靭帯再建術を考慮します。
超音波診断装置(エコー)は、以下の特徴があります。
①医師が外来診療中に可能
②X線撮影のような放射線被ばくがない
③診断精度が最も高い
④とても簡便
エコーを用いた靭帯損傷の評価は、CAIの診断に最も有効です。
実際のエコー画像
その他に、これらの評価方法でCAIと診断、足関節鏡手術による靭帯再建を検討します。
坐骨神経ブロックと伏在神経ブロックで、
十分な鎮痛効果を得ることが可能です。
手術に先立ってエコー画面を見ながら、
①膝窩部(坐骨神経) ②下腿内側(伏在神経)
の2か所に注射針を進め、神経を囲むように
麻酔薬を注入します(エコーガイド神経ブロック)。
エコーガイド神経ブロックは
①正確 ②安全 ③ブロック時の疼痛が少ない
などの特徴があり、日帰り手術に最も適した麻酔法です。
関節鏡手術で用いる約1cm弱の手術創をportal(ポータル:
入口という意味)と呼びます。
関節鏡手術では、①カメラを挿入するviewing portal
②手術器械を挿入するworking portalを通して
全ての作業が行われます。
Viewing portalに挿入する関節鏡に
①カメラ ②光ファイバー ③灌流チューブを接続します。
強力なライトで内部を照らしながら灌流液を注入し、
あたかも水風船のように関節を膨らませることで、
より効率的な作業を可能にします。
Working portalからは、骨を削るシェーバーなどの手術器械や、靭帯縫合に必要なインプラントなどを挿入します
遺残靭帯を元通りに骨に縫い直す方法です。
内視鏡下靭帯修復術は身体への負担が少ないため、より早期のスポーツ復帰や社会復帰が可能です。
靭帯の代替物を埋め込む手法です。
受傷から長い年月を経た場合や、何度も捻挫を繰り返したために遺残靭帯が消失した場合には、
人工靭帯や遊離移植腱を用いた靭帯再建術を行います。
術後約2時間までは、安静臥床で様子観察します。
全身状態に異常がないことを確認してから、離床します。
麻酔の影響で8~10時間ほど足に力が十分に入らないため、
術直後から患肢に体重をかけるのは危険です。
松葉杖歩行に慣れる必要があります。
理学療法士が松葉杖の使用方法をご指導差し上げます。
ギプス固定および松葉杖歩行の期間は術直後から約1週程度です。
スケートボードは、ボードをコントロールするために、
足首の内返し/外返し運動を頻回に繰り返すため、足関節への
負担がとても大きなスポーツです。
転倒時にも足関節捻挫しやすいため、CAIを最も誘発しやすい
運動の一つと考えられます。
ランニング中に足首を捻挫する方は珍しくありません。
言うまでもないことですが、ご自身の足にフィットした
シューズを使用することが捻挫予防に最も大事です。
ヒールを履くのも注意が必要です。
踵が不安定で足先が窮屈なヒールを履いていると、歩行時に
足趾が地面を蹴り出しにくくなるため、足首に過度な負担が
かかり、内反捻挫しやすくなります。
関節鏡下摘出術を追加する場合あり
関節鏡下摘出術を追加する場合あり
当院では、足関節鏡手術に習熟した整形外科専門医が
治療を承ります。
当院では、これまで大学病院や基幹病院の手術室で
勤務経験がある手術スタッフが共に治療にあたります。
修復した靭帯が元通りに機能する(6から8週)までの間患部を
保護してくれる装具はとても大切なものです。
手術後は一時的に足関節が固くなりやすく、立ち姿も
アンバランスになったり、歩き方がぎくしゃくして体の
様々な部分が痛くなることがあります。
手術はあくまで治療のスタートです。理学療法士による
リハビリテーションで機能を回復させる必要があります。
単に靭帯を縫い付けただけでは、思った通りに足は動いてくれません。
術後リハビリテーションが、スポーツ復帰や捻挫再発の予防にとても有用です。
術後リハビリで考慮すべき大事なポイントとして
① 年齢や競技レベル
② それぞれのスポーツが持つ運動特性
③ 靴のフィッティングやインソールの調整
④ 装具や杖の適切な使用
などが挙げられます。
当院リハビリスタッフが個別にご指導差し上げます。
足関節捻挫は日常生活でもスポーツ中でもよくある、ありふれたケガの一つで、
多少痛みがあっても未治療のままで放置されがちです。
CAIの予防には、受傷時にクーリングや患肢固定などの初期治療を入念に行うことが
最も大事です。
もっとも大事なのは初期治療です。
ちゃんと直してからスポーツを楽しみましょう!
いつまでたってもスポーツ後の腫れや痛みが引かない場合には、足関節の靭帯損傷が疑われます。
どのような検査や治療が必要か、まずはお気軽に
ご相談いただきたいと思います。