マラソン外来

はじめに

マラソン

近年は健康志向の高まりから、週末はマラソンやハーフマラソンなどの長距離レースが各地で催されています。レースへの参加人口も増加する一方で、レース中のトラブルも増加傾向にあります。

靴づれや皮膚炎、マメといった軽症例がほとんどですが、肉離れや靭帯損傷等のけがで自力では歩けないほどのトラブルに見舞われる方もおります。さらに重症例では、狭心症や心肺停止などの重大な心臓トラブルのために入院を要する場合すらあります。

マラソンやジョギングは、シューズさえあればどこでもできる気軽なスポーツとして、多くの愛好家から支持される健康的なスポーツですが、本人の健康状態やトレーニング方法によっては、かえって健康に害を及ぼす場合もあります。

当院では整形外科と循環器内科の専門医がマラソン外来を行います。マラソンを愛するランナー達が、これからも長く走り続けられるように、そして、けがや病気が理由で満足にマラソンを楽しめなくなった方が、安全にマラソン復帰できるよう、私たちがお手伝いいたします。

マラソン外来の目的

  1. 1. マラソンなどで発生するスポーツ障害の治療
  2. 2. マラソンによる心臓疾患などの重大トラブルを予防
  3. 3. 心肺機能や基礎代謝の亢進など、マラソンの健康に与える良い効果を治療に活用する

マラソン外来の診療概要

レース前のメディカルチェック

メディカルチェック

専門医による問診と診察、さらに血液検査、胸部X線検査、安静時心電図、心臓超音波検査などを、下記のような症状でお悩みの方におこないます。

  • マラソンなどの長距離レースに初参加する方
  • 脂質代謝異常症や高血圧、不整脈などの循環器疾患を
    治療中の方
  • レース中に胸が痛くなることがある
  • レース後に必ず足腰のどこかが痛くなる

下肢の柔軟性などのコンディションチェック、インソールとのフィッティングチェック

インソール

走った後に必ず足や膝、股関節回りが痛くなる方、ストレッチやトレーニングは行っているものの、どうしても体を故障しやすい方などにお勧めです。シューズの中敷であるインソールは、足への衝撃緩和と同時に足部アーチ構造の維持効果もあるため、地面を蹴る力を強め、ランニングのパフォーマンス向上も期待できます。当院のインソールは、足形だけでなく、お一人おひとりの身体の特徴や歩き方、走り方も考慮して作成しております。

トレッドミルによる運動負荷試験

糖尿病や高脂血症などの生活習慣病、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患に対して治療中の方、メディカルチェックで異常を指摘されて過度な運動を避けるよう医師から指示されている方などに対して行います。心肺機能をモニタリングしながら、ゆっくりと運動負荷を上げていくことで、安全な運動量を見極めます。

足部、足関節のスポーツ障害に対する日帰り内視鏡手術

当院では、足部および足関節疾患に対する日帰り関節鏡手術を行います。関節鏡手術では約1cmの小さな皮膚切開で、足関節や腱、靭帯などの緻密な観察や低侵襲な手術が可能です。アスリートやランナーに多く見られる足底腱膜炎や腱損傷、靭帯損傷、三角骨障害などに対する治療は、早期のスポーツ復帰が期待できる関節鏡手術が最も適した手法と考えられます。

マラソン以外のスポーツに対するメディカルチェックの重要性

スポーツ中のトラブルはマラソン以外でも発生しております。大部分のスポーツ関連突然死は心血管系の異常が原因であり、予防には競技の特性や選手の特徴も考慮したうえで、選手のメディカルチェックが大事なことは言うまでもありません。マラソンやランニング以外の慣れ親しんだスポーツを気軽に行う程度であっても、一度はメディカルチェックをお受けいただくことをお奨めします。

代表的なスポーツにおける、考慮すべき選手の特徴
水泳、トライアスロンなど

トライアスロン

学童の習い事で最もポピュラーなものは水泳です。そして水泳や水中ウォーキングは浮力によって腰や膝の負担が減るため、中高年の健康維持増進のためのスポーツとしても人気が高いです。このように、水泳はさまざまな年齢層の方々に親しまれているスポーツで、主にはスポーツクラブや公共施設のプールを利用します。

しかし近年、トライアスロンの愛好者が増加するのに伴い、海や川、池などの屋外の自然の中で泳ぐ競技が増えてきています。トライアスロン関連競技中の死亡例の多くは、水泳中で発生しており、死亡原因として最も可能性が高いのは、不整脈であると考えらえています。水温やウェットスーツのフィッティングの問題、波や潮流、風、水深などの自然環境特有の条件からくるストレスが、呼吸制限、低酸素血症、ひいては致死的な不整脈を引き起こすものと考えられます。

常日頃より健康状態の管理が重要なのは言うまでもないことですが、自然環境での水泳に十分なれること、呼吸制限をしないペース配分など、レース前に十分な練習を行うことも大事です。

サッカー

サッカー

サッカーは、ボールが一つあれば気軽にできる、世界で最も競技人口が多いスポーツですが、運動負荷がとても高いという特徴もあります。プロサッカー選手がプレー中に倒れて突然死に至るニュースは、国内外でも頻繁に報告されています。スポーツ中の突然死のリスクは、肥大型心筋症、不整脈性右室心筋症、冠動脈疾患など、心血管系の異常に起因しています。たとえばFIFAでは、FIFA主催大会に出場するプロサッカー選手に対して、既往歴や家族歴の聴取、身体所見や整形外科的所見の評価に加えて、負荷心電図、心臓エコー、血液生化学検査を義務づけています。このように、突然死予防の為にはメディカルチェックがとても重要と考えられています。

バレーボール、バスケットボールなど

バレーボール

バレーボールやバスケットボールは、競技の性質により身長が高い選手が多いことが特徴です。そのため、これらの協議で活躍する選手のメディカルチェックでは、Marfan症候群の有無を特に注意する必要があります。Marfan症候群とは、フランスの小児科医であるMarfan医師によって報告された、全身の結合組織に異常をきたす遺伝的疾患です。高身長で、手足が長く、高い柔軟性を持つことなどがスポーツで高いパフォーマンスを生み出すのに役立つ一方で、大動脈解離や大動脈瘤などの致死的な心血管病変を合併することもあるため、突然死のリスクとなります。そのため、身長が男性190cm以上、女性180cm以上の選手には、Marfan症候群チェックのため、胸部X線、心電図だけでなく、心臓エコー検査も必要と考えられます。

高齢者スポーツ

高齢者

一般的な運動効果としては、心拍出量増加による心機能改善、最大酸素摂取量増加による呼吸機能改善、血管壁の弾力性向上による血圧低下、インスリン感受性向上による高血糖症の改善などが挙げられ、適度な運動は生活習慣病の予防や心肺機能の維持にとても有効だと考えられます。

特に高齢者においては、筋力が強化されることで転倒や骨折による寝たきりを減らし、骨粗鬆症に代表される整形外科的問題を改善するだけでなく、うつ病予防や認知機能の改善も期待でき、更に生活の質(QOL)の充実や生きがいにもつながるため、総合的に健康寿命の延伸をもたらすものと考えられています。

一方、高齢者は若年者と比較して、心血管系の機能低下や慢性疾患の合併などにより運動中に虚血性心疾患の発症率が高いため、運動中の胸痛や失神、不整脈には注意が必要です。特に心疾患を治療中の方がスポーツに参加する場合、急性の冠動脈疾患や急性心不全、致死性不整脈などの重篤な病状を発症する危険が伴います。

しかし、自己管理を徹底し、運動前に準備を行えば安全にスポーツに取り組むことができ、様々な疾患の予防となります。心疾患以外でも、循環器や呼吸器疾患、腎疾患などを持病とする場合には、スポーツを行う際に治療に影響が出ないか、メディカルチェックを行うことをお勧めします。

担当医師


循環器科担当

岩野 圭二 医師

循環器専門外来を担当しております。 幼少期よりスポーツが大好きで、野球、サッカー、バスケットボール、テニス等なんでも施行してまいりました。高校、大学では陸上部に所属しており、専門は100M走で自己のベストタイムは11秒34です。残念ながら最近は子供と遊ぶぐらいしか運動ができていません。

東京マラソンが2007年に開始されてから、9回の大会が開催されましたが、その中で心肺停止状態になったランナーが7名います。その7名すべてがAEDや心肺蘇生法によって命を救われています。万全を期しても不運にも病気を予防できないこともあります。

当院では、採血、レントゲン、心電図、心臓超音波検査、トレッドミル検査等を施行して運動耐容能の評価や、胸痛発作や心電図の虚血変化、不整脈の出現等を検査させていただきます。結果を総合的に判断し、より安全にスポーツが出来るようにアドバイスをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

略歴

  • 平成3年 東京慈恵会医科大学医学部卒業
  • 平成12年 東京慈恵会医科大学循環器内科助教
  • 平成14年 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 循環器内科助教 病棟長
  • 平成17年 埼玉北部医療センター 循環器科部長
  • 平成21年 社会医療法人南町田病院 循環器科部長
  • 平成30年 行徳総合病院 内科統括部長

資格

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本内科学認定内科医
  • 日本循環器学会循環器専門医
  • 日本救急医学会ICLSインストラクター・ディレクター
  • 医学博士日本医師会認定産業医

所属団体

日本内科学会 日本循環器学会 日本救急医学会


整形外科担当

森末 光 医師

整形外科を担当しております(当院院長)。 ジョギング好きの私は、大学時代に週1回ほど陸上部の練習に参加していましたが、その時の陸上部キャプテンが岩野圭二先生でした。大学時代に一緒に汗を流した方々と陸上競技にまつわる仕事をしたいと夢見ていたので、今回こうして“マラソン外来”を開設できることをとても幸せに思います。

足裏やふくらはぎ、膝の痛みなど、マラソンにまつわる下肢のトラブルはさまざまありますが、シューズやインソールなどの調整で簡単に解決することも少なくありません。また、ランニング中に足首を捻って捻挫した後、治療せずに放置していると、足首の腫れがなかなか軽快しないことや、捻挫を繰り返す後遺症を残すことがありますので、早めに適切な対処をすることがとても大事です。

当院では、陸上競技を愛する循環器専門医と整形外科専門医が、あなたをサポートします。内服治療中の方でも、手術後の方でも、マラソンを楽しめるようお手伝いいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

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